日本人は不幸!?ワークライフバランスを見直してみよう

教育研修

「24時間戦えますか」という栄養剤のCMが放送されたのはまだ20年前。その時に若手で徹夜を繰り返していた人は、いま「ワークライフバランス」という言葉が生まれることを予想したでしょうか。2010年代に入ってから働く人、および家族の考え方が続々と変わり、仕事とプライベートの「両立」が尊重されるようになりました。ワークライフバランスはどのような背景で生まれ、どのように浸透してきたのでしょうか。合わせてこの考え方は、社会にどのような効果を与えるのかを考えます。

ワークライフバランスとは何か?

ワークライフバランスとは、仕事とプライベートの両立を実現することです。残業や長時間労働をなくすことがワークライフバランスと捉われがちですが、「これだけ」ではなく、早めに退社することで仕事以外の時間を割けるようにすることを意味しています。これまでの日本は仕事の優先度が高く、外国諸国よりも働くことでGDP(国内総生産)が世界3位となりました。中国が台頭する2008年までは2位でしたが、1945年に戦後の焼け野原から「たった」60年でここまでの経済大国になったのは奇跡的なことです。ところがGDPに健康寿命や政府への信頼などを加えた「幸福度調査」において日本は2017年時点で51位とGDPと比較して落ち込んでいます。

このような調査も手伝って、日本では仕事以外の充実度を上げる方向性が強まっています。また日本において喫緊の課題は少子高齢化です。子育て環境を充実するためには、父親が会社に張り付いていては難しいため、ワークライフバランスが浸透したということもあります。

従業員にとってのワークライフバランスを考える

従業員にとってワークライフバランスの効果は、残業(時間外労働)が削減されることです。これまでの日本は効率ではなく「残業時間ありき」のところがあり、いわば悪習を取り除く効果があります。早めに帰宅して家族サービスをする人もいれば、副業やキャリアの勉強などで自己投資をする人も増えます。ライフ部分の選択肢を増やすことで、従業員それぞれに満足度を高めて貰おうとする狙いがあります。いま日本では、副業を容認する働き方改革や職場以外で仕事をするリモートワーク(テレワーク)も推奨されています。これら具体的な施策を進めるための根本的な取り組みがワークライフバランスです。

会社にとってのワークライフバランス

ワークライフバランスが効果的なのは従業員だけではありません。会社がワークライフバランスを許容のうえ社内の体制を整えないことには国の施策も進まないのですが、会社にとってもプラスの面があります。

現在の社会は、「ブラック企業」として定義されることを回避しなければなりません。社長など経営陣が意識していても、従業員にその空気が行き届くはとても難しいこと。営業部の部長が従業員に手を出し、それが会社の評判として著しく信頼を棄損したという話は数多くあります。そこで経営陣がワークライフバランスを尊重することで、会社の方向性を定めることができます。会社のリスク回避として、とても有効です。以前は「会社の業績を上げるために残業をする」という流れがありましたが、今はその考え方の会社・経営者に対して送られるのは賞賛ではなく、従業員のことを考えていないというマイナスの評価を受けるようになりました。

会社にとってのライフワークバランス②

また、従業員が自発的に育ってくれるという面も会社にとってメリットです。ここ近年はビジネスを発展させるのに斬新な技術や考え方が増えています。AI(人工知能)など、今後のビジネス環境を根本的に変える、とされている知識も広がっています。ただ、会社は収益を生まなければいけないなかで、本業に関係あるものはともかく。そのような知識に時間や資金を割くことはできません。そこで、従業員に対してワークライフバランスを提供することで、会社としての成長も実現することができます。

会社がtoC(対消費者)を主戦場としている場合は、家族との時間が増えることで業務とのシナジーを期待することもできます。スーツ姿の男性のなかで会議を重ねても、女性や子どもに支持される商品は生まれにくいのではないでしょうか。現在は更に消費者の価値観が多様化しているため、会社が「束縛」しないことで逆に、会社へのプラスの効果を期待することができます。

国や地方自治体にとってのワークライフバランス

国や地方自治体にとっては少子化をはじめ、ワークライフバランスを進めることは社会的な義務です。そのために従業員と会社両面に気を配り、実現していくことが大切です。今後も更に予算が当てられ、充実した施策がとられていくことでしょう。

今後のワークライフバランスに注目

ワークライフバランスという言葉はとても抽象的なものなので、働き方改革をはじめ、具体的な施策が時勢によって異なります。従業員・会社・行政がタッグを組んで、理想の社会の実現に向けて進めていくことが何よりも大切ですね。

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プロのコメント

市川直人 社会保険労務士
  • 千の葉社労士合同事務所
  • 市川直人社会保険労務士

そもそも、ワークライフバランスを実施するための施策は、法律等で定められているのですが、現実としてその利用は少ないのが現状です。たとえば、労基法39条の年次有給休暇ですが、実際には1年に8日取れれば…というくらいだと思います。 育児・介護休業法は、今月1日に改正施行され、一定の要件に該当する方が延長することができる期間が1歳6ヵ月から2歳まで再延長できるようになりました。 しかしながら、家計を担っている男性の育休取得率は依然として低いのが現状です。 介護に関しても、休むと収入がなくなるので介護休業をするより、どちらかというと、奥さんがいる方であれば、大変申し訳ないけど、奥さんにお願いする部分が多いのではないでしょうか? 今は、単身世帯が増えてきてますので、そういったこともドンドン難しくなっていくのかと思います。 ※雇用保険の雇用継続給付(育児休業給付金・介護休業給付金)は出ます。 社会全体でというのは、なかなか難しいですので、まずは、労使で制度の利用を通して、取組をしてみるということが重要なのかなと思います。

熊谷知直 社会保険労務士
  • 熊谷綜合労務事務所
  • 熊谷知直社会保険労務士

何でもかんでもワークライフバランスが「善」という訳ではありません。 先日も「我が社にもワークライフバランスを取り入れた方が良いのか」というご相談を頂きましたが、話を聞いてみると何のために取り入れるのか経営者ご自身もはっきりしていなかったことがありました。 ワークライフバランスといっても、まずその「目的」を明確にすることから始めなければなりません。 社員が長時間残業で疲弊しているから…ということでしたら、それは労災事故防止、安全配慮義務を守るために事業主として当然の責務なので、ワークライフバランス以前の問題です。 一般的に、「労働者として普通の健康状態で働ける標準的な労働時間」より労働時間を短くし、仕事以外のことをもっと生活に取り入れるようにするということが世間でよく言われているワークライフバランスの定義だと思います。 「普通の健康状態で働ける標準的な労働時間」といっても人によって違うと思いますが、労基法で定められている「法定労働時間」だとすると、それより短くする、いわゆる「時短」というものがワークライフバランスだと言えるのだと思います。 それが本当に必要なのかどうか、今一度考えてみて頂ければと思います。 人は働くことによって成長し、人格を形成していく側面も大きいです。仕事は確かに辛くて大変なことも多く、楽しいばかりではないですが、だからこそ人として成長していける部分が大きいです。中にはやりたいことがやれて仕事が楽しいという人もいるでしょう。 何の目的もなくワークライフバランスを入れても、こうした「仕事のやりがい」や「成長」を奪ってしまうことにならないでしょうか。 私の尊敬するある社労士さんが、中学生を相手に講演をしたときに、中学生に「休みが法律どおりの会社と、もっと休みが多い会社ではどっちが良いですか?」と聞いてみたところ、休みが法律どおりの会社の方が良いと答えた子がほとんどだったと聞きました。小さい子の方が仕事に対しまだ憧れを持っているのかもしれません。大人に同じことを聞いたら逆の結果になってしまうのは何故でしょう。 「休むことは良いことだ」が当たり前の世の中になり、「働くことは喜びだ」という考えが廃れてきているように思います。職業キャリアを積まないまま40~50歳くらいになり、何らかの事情で会社の外に放り出されてしまったら、それこそその人を不幸にしてしまいます。 ワークライフバランスを取り入れるにしても、仕事に役に立つような内容、例えば「自己啓発休暇」を付与してレポートを提出してもらうとか、自分なりに休暇の使い方を計画して報告してもらうなど、会社にとっても社員の将来にとっても有益なやり方を考えてみるのが良いかもしれません。

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この記事の監修者

前田 悦雄(まえだ えつお)と申します。 人事労務に長年携わり就業規則の改善・作成業務を中心とし、給与計算などにも注力しています。 人生の半分近くを人事の現場に従事してきた...