【節税対策】平成30年度税制改正「所得拡大促進税制」のメリット

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個人事業主、法人問わずに税金がお得になる「所得拡大促進税制」。中小企業を応援するための税額控除制度のひとつで、平成30年度の税制改革でさらに拡充されました。従業員の給料を一定の割合以上アップすることで適用になるため、比較的取り入れやすい制度です。上手に活用して節税に繋げるために、ここでは制度の仕組みと手続き方法について詳しく解説します。

所得拡大促進税制とは

「所得拡大促進税制」とは、積極的な賃上げに取り組む中小企業を応援する中小企業税制のひとつです。法人、個人事業主に関わらず利用でき、業種による制限もありません。従業員の給与を増額することで税負担が軽減されるため、要件を満たすのであれば非常にメリットのある制度になります。

最大で25%の税額控除

「所得拡大促進税制」は、上の図の通り、前年度より給与が増加した場合に適用される「税額控除制度」です。法人の場合は法人税、個人事業主の場合は所得税から、それぞれ控除されます。

従業員1人当たりの平均給与が前年度比で1.5%増加した場合は、増加額の15%が税額控除となります。さらに、1人当たりの平均給与が前年度比で2.5%以上増加し、教育訓練や生産性向上に取り組んだ場合は税額控除率が25%に上乗せされます。

平成30年度の税制改正でさらに拡充された

実はこの「所得拡大促進税制」は平成30年度の税制改正で、税額控除率が拡充されました。さらに適用要件も見直され、より利用しやすい制度になりました。主な変更点は、適用期限が3年間延長されたこと、税額控除率が拡大されたこと、基準年度から増加要件が撤廃されたことです。以下に主な変更点を紹介します。

【所得拡大促進税制の変更点】
変更点 改正前 改正後
適用期限 平成30年3月31日までに開始する
事業年度まで
平成33年3月31日までに開始する
事業年度まで延長
税額控除率 10% 15%
上乗せ措置 なし 要件を満たせば25%に上乗せ
賃上げの要件 基準年度(平成24年)と比べて
一定割合増加していること
撤廃

この変更が適用されるのは、平成30年4月1日以降に開始される事業年度からになります。平成30年3月31日以前に開始された事業年度については、制度の内容が異なります。詳細については中小企業庁のホームページや税理士に確認するようにしましょう。

大企業向け「賃上げ・生産性向上のための税制」

「所得拡大促進税制」は従来、大企業も活用できる制度でした。平成30年度の税制改正によって、大企業向けの税制は「賃上げ・生産性向上のための税制」と名称が変更されています。中小企業とは制度が異なるため、詳しくは経済産業省のホームページをご確認ください。

税額控除と所得控除の違い

この制度の特徴は、「給与の増加額」の一部を「税額控除」するという点です。似たものに「所得控除」というものがありますが、計算方法が異なるため個人事業主の方は注意が必要です。

「所得控除」は、課税所得金額を計算するために、利益から差し引くことのできる金額で、配偶者控除や医療費控除など全部で14種類あります。利益から所得控除額を差し引いた金額(課税所得金額)に税率をかけて所得税額が計算されます。「税額控除」は、この計算で得られた税額から控除するものです。また、控除を受けるには、青色申告書を作成して提出しなければなりません。

税額控除の適用要件

それでは、この「所得拡大促進税制」の適用要件について詳しく解説します。

対象は「青色申告書を提出する中小企業者等」

ここでいう「中小企業者」とは、租税特別措置法上の要件になります。青色申告書を提出していて、大企業の子会社などでなく、従業員1,000人以上の個人事業主でもないことが条件となります。

1. 資本金または出資金が1億円以下で、発行済株式や出資の一定割合(1つの法人で2分の1または複数の法人の合計で3分の2)以上が大規模法人に所有されていない法人。

2. 資本金または出資を有しない法人または個人で、常時使用する従業員の数が1,000人以下。

適用期間は「平成33年3月31日までの期間内に開始する各事業年度」

この制度が適用されるのは、平成30年4月1日~平成33年3月31日までに開始する事業年度すべてになります。この期間内に始まる事業年度ごとに給与の増加があれば、毎年度、税額控除が受けられます。

事業年度は、個人事業主の場合は1月1日から12月31日までとなります。法人の場合は自由に決められますが、おおよそ4月1日から3月31日を事業年度にしていることが一般的です。この場合、平成32年4月1日から始まる事業年度までが所得拡大促進税制の適用となります。9月決算の場合は、平成32年10月1日から始まる事業年度までが対象となります。

適用の要件

所得拡大促進税制の適用要件は、以下の2つになります。継続雇用者1人あたりの平均給与が、前年度と比べて1.5%以上増加していることが適用の要件です。(聞きなれない単語が出てくるので、後に詳しく解説します)

1. 雇用者給与等支給額が前事業年度を上回っていること

2. 継続雇用者給与等支給額が前事業年度と比べて1.5%以上増加していること

上乗せの要件

税額控除の割合が25%に上乗せされる要件は以下の通りとなります。継続雇用者1人あたりの平均給与が、前年度と比べて2.5%以上増加し、一定の要件を満たすことで適用となります。

1. 継続雇用者給与等支給額が前事業年度から2.5%以上増加

2. 次のいずれかを満たすこと

・ 教育訓練費が対前年度比10%以上増加

・ 経営力向上計画の認定を受け、経営力向上がなされている

「教育訓練費」とは、研修・セミナー等の教育訓練に係る費用で、講師謝金、施設使用料、研修委託費、外部研修参加費などが対象になります。「経営力向上計画」とは、中小企業庁が実施する経営強化法による支援プログラムで、人材育成や財務管理、設備投資に関する取り組みを通じて経営力向上を図るものです。経営力向上報告書を提出することで、認定を受けることができます。

控除額の計算方法

どのくらい控除されるのか、実際に計算してみましょう。従業員数10人、前年度の1人あたりの平均給与が400万円の企業の場合を考えます。

1人あたりの平均給与を2%増加させた

〔(当年の給与総額-前年の給与総額)×15%〕が税額控除額となるので、この場合は80万円×15%=12万円が控除額となり、法人税額または所得税額から差し引かれます。

  前年度 今年度
1人あたりの平均給与 400万円 408万円【増加率2%】
給与総額 4,000万円 4,080万円【80万円増加】

1人あたりの平均給与を3%増加させた

増加率が2.5%以上なので、教育訓練要件または経営力向上要件を満たす場合は、120万円×25%=30万円が控除額となります。増加率が2.5%以上でも、教育訓練要件または経営力向上要件を満たさない場合は15%の税額控除となり、18万円が控除額となります。

  前年度 今年度
1人あたりの平均給与 400万円 412万円【増加率3%】
給与総額 4,000万円 4,120万円【120万円増加】

用語の説明

継続雇用者

継続雇用者とは、前事業年度と適用事業年度のすべての月(12か月間)で給与の支給を受けた国内雇用者であり、雇用保険の一般被保険者であることが条件となります。雇用保険の高年齢被保険者、短期雇用特例被保険者、日雇労働被保険者は継続雇用者に含まれません。また、前年度の途中に入社・退社した者従業員、雇用保険に未加入の従業員についても継続雇用者に含まれません。

国内雇用者

法人または個人事業主の有する国内の事業所に勤務する雇用者で、国内に所在する事業所にて作成された賃金台帳に記載された者を指します。国内雇用者には、パートやアルバイトも含みますが、役員や個人事業主の親族など特殊関係者は含まないので注意が必要です。

継続雇用者給与等支給額・1人あたり平均給与

継続雇用者に支払った給与の総額になります。人数で割ることで、1人あたり平均給与を算出します。

雇用者給与等支給額・給与総額

継続雇用者に限定せず、すべての従業員(役員などは除く)に支払った給与等の総額になります。

雇用者給与等支給増加額

継続雇用者に限定しない雇用者給与等支給額から、前事業年度の雇用者給与等支給額を控除した金額をいいます。この金額に15%または25%を乗じて税額控除額を算出します。

所得拡大促進税制適用の要件を再確認してみよう

【要件1:雇用者給与等支給額が前事業年度を上回っていること】

継続雇用者に限らず、すべての従業員の給与の総額が前年度を上回っていることを確認します。

【要件2:継続雇用者給与等支給額が前事業年度と比べて1.5%以上増加していること】

増加率は継続雇用者に対して支払った給与から算出します。前年度と比較して、1.5%以上増加していることを確認します。

所得拡大促進税制の注意点

1期目は適用できない

この制度は平成30年4月1日~平成33年3月31日までに開始する事業年度が対象となっています。設立1期目の場合は、前年度からの給与増加額等の比較ができないため適用されません。

継続雇用者が0人の場合は適用できない

給与総額が前年度よりアップしていても、継続雇用者の要件に当てはまる従業員がいない場合は、この制度が適用されないのでご注意ください。

税額控除の限度額に注意

税額控除額は、その事業年度の調整前の法人税額または所得税額の20%までが上限となります。

手続きは確定申告時に行う

手続きは確定申告時に行うため、特別な申請は必要ありません。確定申告書の「雇用者給与等支給増加重複控除額」に記入し、計算に関する明細書や今事業年度と前事業年度の継続雇用者給与等支給額を記載した書類を添付して提出します。控除される金額は、この明細をもとに計算します。

まとめ

「所得拡大促進税制」は中小企業の味方となる、お得な税制度です。賢く活用して節税に繋げたいものですが、資金繰りや費用対効果などを含めて検討するべきであり、正確なシミュレーションが必要です。特に、個人事業主の場合は様々な所得控除も考慮する必要があるため、とても複雑な計算になってしまいます。手続き方法や節税効果について不安のある場合は、中小企業税制に詳しい税理士に相談することをおすすめします。

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個人事業主・法人関わらず節税の方法は多岐に渡ります。利益や経費だけでなく、様々な所得控除、税額控除を考慮して対策を行う必要があり、専門知識が必要になります。節税対策を考えるなら、プロの力が必要です。節税に詳しいプロなら、正確に納税額をシミュレーションした上で、的確なアドバイスが可能です。まずは気軽に「まとめて相談」をしてみましょう!

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プロのコメント

染木満則 税理士
  • 染木満則税理士事務所
  • 染木満則税理士

税制の変更により、今後も納税者の方々にとって有利なものが出てくると思います。 使い勝手が良いかどうかは別の問題でもあるので、気になるトピックや話題がありましたら税理士にご相談いただくのがよろしいかと思います。 自分のところは活用できるのか? どれくらい手続きに時間がかかるのか? とりあえず気になったことをご相談いただくのが良いと思います。

山内聖堂 税理士
  • 山内経営会計事務所
  • 山内聖堂税理士

旧所得拡大促進税制は、継続雇用者が0人であった場合などでも適用を受けることが出来たので、雇用保険に加入する必要のないアルバイトばかりの職場でも適用を受けることができたが、改正により利用することが出来なくなったので注意が必要です。 会社の従業員数が10名を超える会社では、「継続雇用者」の把握が煩雑になります。また、25%控除の適用を受ける要件を満たすための申請書の提出も、専門的な知識がある方のアドバイスを受けた方が間違いないでしょう。 社員が10名以上の会社又は25%控除の適用を受ける会社は、税理士などの専門家のアドバイスを受けることをオススメします。

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この記事の監修者

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