平成30年度改正の「事業承継税制」とは?

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中小企業の経営者が高齢化が進み、今後の10年間で70歳を超える中小企業の経営者が約240万人余りと推定され、そのうち約半数が後継者未定といわれています。そのため、このままの状態だと、後継者不足の中小企業はたとえ利益を上げている会社であっても廃業する可能性があり、それに伴って雇用も失われることになりかねません。この状態を食い止めるために、次世代経営者への事業承継を加速させるための税制が平成30年から創設、拡充されました。事業承継税制の平成30年の改正点について解説します。

事業承継税制とは

通常、事業を承継する際には、その会社の株式にも相続税や贈与税などの負担が発生することがあります。しかし、事業承継税制が適用されると、その会社の株式等の取得にかかる相続税・贈与税の免除及び納税猶予が受けられるようになります。

この制度は「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例」と「非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例」と呼ばれ、この2つを併せて事業承継税制と呼びます。事業承継をする際に、贈与や相続にかかる大きな税負担があると、承継が円滑にいかないという問題を受け、平成20年5月に中小企業・小規模事業者の事業承継を円滑にすることを目的とした、「経営承継円滑化法」という法律が制定され、また平成21年4月1日に事業承継関連税制が創設されました。

事業承継税制の概要

税金の納税猶予や免除が受けられるという事業承継税制の特例は「非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例」と「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例」の2つになります。

「非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例」とは

後継者である相続人が、都道府県知事の認定を受ける非上場会社を経営していた被相続人から、相続によってその会社の株式を取得し、経営をしていく場合には、本来納付すべき相続税のうち、発行済議決権株式総数の3分の2までの課税価格の80%に対応する相続税の納税猶予が認められる特例です。

「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例」とは

後継者である受贈者が、都道府県知事の認定を受ける非上場会社を経営していた先代経営者から、贈与によってその会社の株式を全部または一部を取得し、経営をしていく場合には、本来納付すべき贈与税のうち、発行済議決権株式総数の3分の2までの全額の納税猶予が認められる特例です。

事業承継税制の適用要件

事業承継税制の適用を受けるためには、都道府県知事の認定と事業継続報告の2点が必要です。事業承継税制の適用を受けるには、経営承継円滑化法に基づき、会社と後継者および先代経営者それぞれについて、都道府県知事の認定を受けなければなりません。

また、納税猶予の適用後、引き続き納税猶予の状態を継続するには、贈与税および相続税申告書の提出期限の翌日から5年間、「5年間後継者が代表者を継続する」、「雇用の8割以上を5年間平均で維持する」、「対象株式を継続して保有する」、「非上場会社である」、「資産保有・運用会社や風俗営業会社でない」、「現経営者が代表者を退任(有休役員として残留可)」という要件を満たす必要があります。

これらの要件を一つでも満たさなくなると、猶予適用期間が終了し、猶予税額の全額と利子税を合わせて納付することとなります。

事業承継税制の平成30年改正内容

この事業承継税制は平成30年4月1日に改正されました。

具体的には、対象株式数の上限(改正前は3分の2)を撤廃し、全株式が適用可能になり、納税猶予割合(改正前は相続税の猶予割合は80%)が100%に拡大されます。これによって、改正前は一人の先代経営者から一人の後継者に対する承継のみでしたが、複数の株主から、代表者である後継者(最大3人)への承継も対象になります。ただし、株式を引き継ぐ後継者は代表権を有する必要があり、それぞれが議決権割合10%以上を有し、かつ議決権保有割合上位3位までの同族関係者に限ります。

また、後継者が自主廃業や売却を行う際、承継に贈与税や相続税が課税されますが、今回の改正により廃業時や売却時の評価額を基に納税額を計算できることになり、承継以降、経営環境の変化により経営が悪化しても、自主廃業や売却時での評価額を基に納税額が計算され、承継当初の株価より下がっている場合は納税額も減免されます。

そして、雇用維持については、5年間で平均8割以上の雇用を維持することが要件でしたが、改正により、未達の場合でも贈与税や相続税の猶予が継続可能になりました。

事業承継税制の注意点

事業承継は、株式や事業を承継するタイミングだけでなく、後継者選定や後継者育成、後継者のための体制作りも必要になる、いわば会社全体の問題です。よって、事業承継税制に詳しい税理士に早めに相談し、事業承継の準備をすすめていくべきでしょう。

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プロのコメント

山栄大幸 社会保険労務士
  • 労働者派遣申請代行センター
  • 山栄大幸社会保険労務士

最近は特に後継者不足が問題視されておりますし、親族による事業承継やM&Aによる第三者による事業承継も視野に入れて後継者を捜す瀬策が中小企業庁等で行われております。 中小企業の事業主が死亡し、当該企業の後継者が会社の非上場株式を相続した場合に、多額の相続税が課税されることにより、事業承継が困難になるという弊害を解決するために、一定の要件のもと、多額の相続税の納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除される制度を事業承継税制と言われております。 事業承継税制も経営承継円滑化法における施策のうちの一つですが、その他にも自社株を遺留分の算定基礎財産から除外するという民法の特例を受ける事により遺留分減殺請求権の行使を制限し事業承継を円滑化する施策も有ります。 当該施策を受ける条件としては、経済産業大臣の確認が下りてから、1ヶ月以内に家庭裁判所へ特例合意の申し立てを行い、家庭裁判所の審理により特に問題点が見つからなければ、後継者へ遺留分に関する民法の特例に関する許可が出て、遺留分に関する民法の特例が認められる流れとなります。 更にもう一つの施策としては、事業承継計画を実施するために必要な設備資金および長期運転資金を日本政策金融公庫により受けられる施策が有り、4億円までの特別利率と4億円超の基準利率を設けており、融資限度額が、直接貸し付け7億2千万円となっております。 返済期間に関しては、設備資金は20年以内で運転資金は7年以内となっております。

染木満則 税理士
  • 染木満則税理士事務所
  • 染木満則税理士

後継者への事業の承継は中小企業にとって非常に難しい問題だといえます。 税金の面からそれらの支援を行うことでよりスムーズな承継を進めようというのが政府の考え方です。 他の先生方のコメントにもありますが、複雑な制度でもあるのでお考えの際にはぜひ税理士はじめ、専門家にまずはご相談いただくのが良いでしょう。

山田卓生 税理士
  • 山田卓生税理士事務所
  • 山田卓生税理士

平成30年の税制改正で、新しい事業承継税制が本年4月1日よりスタートしました。 新事業承継税制は、相続税・贈与税の猶予対象となる株式数の上限撤廃や猶予割合が100%に引き上げと、自社株に係る贈与税・相続税を後継者へ税負担なく引き継げる唯一の方法です。 また、従来の事業承継税制でネックとなっていた5年間の平均雇用割合8割維持の要件も実質撤廃となり、後継者にとって納税猶予の打ち切りのリスクが軽減さるようになりました。 新しい事業承継税制の適用を受けるためには、平成35年(2023年)3月31日までに、認定経営革新等支援機関の所見を記載した特例承継計画を都道府県へ提出する必要があります。 したがって、平成35年(2023年)3月31日までに、特例承継計画を提出せずに、平成35年(2023年)4月1日以降に相続・贈与があった場合には、新しい事業承継税制は適用できませんので、注意が必要になります。 なお、特例承継計画提出後でも後継者、後継者の人数、事業計画の大幅な変更等、計画内容の変更をすることは可能です。そのあたりを踏まえ、お早めにご検討ください。

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この記事の監修者

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