問題社員を解雇したい…不当解雇で訴えられないための適切な対応方法とは?

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能力や態度に問題がある社員であっても強引に解雇をしてしまうと、不当解雇で訴えられるリスクが生じます。不当解雇で敗訴してしまうと会社にとって良いことはありません。ここでは、解雇した労働者から不当解雇と訴えられないための対策や、合意退職に至るポイントをご紹介します。

不当解雇とは

使用者と労働者の関係は、一般的に使用者のほうが強い立場にあるのが現状です。そのため、労働者が不当な扱いを受けないように、使用者には様々な制限がかけられています。解雇についても同様です。解雇とは、使用者が労働者の承諾を得ることなく一方的に労働契約を将来に向けて解約することをいいます。

戦力にならない労働者は解雇したい、と思う使用者は多いのですが、合理的な理由のない解雇については「不当解雇」とみなされ、使用者にとって不都合な対応を求められる恐れがあります。労働契約法第16条に明示されている通り、解雇をする場合は、客観的かつ合理的な解雇事由を有しており、社会通念上解雇に相当すると認められない場合、不当解雇として解雇が無効になることがあります。

安易に解雇をしてしまうことで、労働者との紛争が引き起こされてしまいます。それによって、必要以上の労力や費用が掛かってしまうケースも少なくありません。もし、解雇を検討している労働者がいる場合は、慎重に進めるようにしましょう。

不当解雇と認定されるとどうなるのか?

使用者が労働者を解雇して、その解雇が不当解雇と認められると、解雇自体が無効となります。そのため、労働者が望む場合は、再び雇用を継続する必要があります。また、解雇された労働者が、使用者の元で継続して雇用されたくない場合は、不当解雇によって受けた不利益について、金銭の支払いを明示される恐れもあります。実際に過去に不当解雇と判決された紛争においては、高額な支払いが命じられるケースもあったので、使用者は十分に注意をする必要があります。

平成22年2月9日に東京地方裁判所で下された判決では、経営者の事業方針や業務命令に従わないことを事由とした諭旨解雇が客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとして無効とされました。これによって、裁判所は使用者に対して、判決確定まで毎月、使用者の給与月額50万円余りの支払いを命じています(労働判例1005号47頁)。

また、大阪地方裁判所で平成14年3月22日に下された判決では、パソコンの入力ミスを多数繰り返すという事由での解雇が解雇権濫用に該当し不当解雇として無効とされました。これによって、裁判所は使用者に対して、判決確定まで毎月、使用者の給与月額43万円の支払いを命じています(労働判例832号76頁)。

このように、非常に高額になる支払いが発生する恐れがありますので、不当解雇にならないような対策が必要です。

合意退職であっても証拠は重要

不当解雇として訴えられないためにも、どのような理由であっても円満な退職を目指す必要があります。どれほど能力的に劣っている労働者であっても、それだけで解雇することは難しいです。万が一訴えられた場合に、客観的に認められる証拠を提出する必要があるからです。

しかし、能力的な問題は、どうしても使用者側の主観が入るため、客観的な証拠を提示するのが難しいです。そのため、一方的に解雇を言い渡すのではなく、労働者と合意の上で退職の手続きを進めてトラブルを回避することを第一に考えるようにしましょう。円満な合意退職になれば、後々不当解雇として訴訟される可能性は、解雇に比べると低くなります。

ただし、円満退職であっても、能力の低い労働者に対して使用者が適切な指導や教育を行った記録、配置転換や退職勧奨を行い、合意退職に至ったプロセスの証拠をすべて保管しておかなければなりません。そうすることで、訴訟を起こされた場合でも、「自由意思での同意」を立証する証拠として活用できる場合があります。

まずは配置転換を検討しましょう

労働者の能力が使用者が求める基準に満たない場合、即時解雇をすると不当解雇とみなされる可能性が高いです。まずは、適切な教育をすることによって、労働者の能力を上げることができるように試みましょう。

それでも労働者の能力が向上しない場合、労働者の配置転換を検討する必要があります。与える業務を変更することで、よい方向に転換する可能性があるからです。ただし、場合によってはそれでも変化がないこともあります。そのような場合は、退職勧奨を行った上で、降格や降給などを実施したほうがよいでしょう。

退職勧奨を行う場合の注意点

退職勧奨は1対1で行うと、あとになって退職を強要されたといわれる恐れがあります。退職勧奨をする場合は、使用者側は2名程度で長時間にわたらない面接を行い、1名はメモや記録を取るなどの配慮をしましょう。

労働者が退職勧奨を受け入れる場合、退職金などの加算を検討しておくと、交渉を進めやすくなることがあります。また、後々のトラブルを避けるために合意書を作成しておくことも大切です。合意書については、不備があると証拠として役目を果たさないため、弁護士などの専門家に依頼することをおすすめします。

トラブルに発展しないように専門家へ相談を

裁判で不当解雇と判断されると使用者にとって不利益を被ってしまいます。不当解雇とみなされないために、適切な円満退職を目指すようにしましょう。万が一にでもトラブルに発展してしまわないように、専門家である弁護士に相談しながら進めていくことをおすすめします。

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プロのコメント

山栄大幸 社会保険労務士
  • 労働者派遣申請代行センター
  • 山栄大幸社会保険労務士

罪刑法定主義の原則が有りますので、構成要件に該当する事が大事になりますので、就業規則に、どの構成要件に該当すれば普通解雇で、どの構成要件に該当すれば懲戒解雇になるのかを詳細に明記しておく事が重要になります。 尚、超過解雇に関しては、弁明の機会を与える規定を就業規則に盛り込んでいる事業所も有ります。 懲戒解雇は、普通解雇のように30日の解雇予告期間が無いので、監督署の認定が必要になります。 尚、法律不遡及の原則が有りますので、解雇の構成要件を判断する際には、解雇事案が発生した時点で既に適用されている就業規則の規定が重要になります。

秋山倫一 行政書士
  • 行政書士事務所秋山法務店
  • 秋山倫一行政書士

 弊職の端的・過激な持論。「仕事ができない理由は2つ。能力がないかヤル気がないか。能力がなければリストラ、ヤル気がなければ(懲戒)解雇。」  本題の「問題社員」については特段の方途が必要となり、自身においても過去、その処置、処分に苦慮した経験が何度もあります。  問題社員というのは意外とたくさん実在するものです。中には思わず殺意が沸くほどタチの悪いのも少なからずいます。  会社都合(即時解雇、通告解雇)が相当の理由がない限り難しいのは周知の事と思います。  これを自主退職(自己都合)に持ち込むためには、率直にその問題となる言動や事実を指摘し、それがいかに会社にとって看過できない不利益を被らせるかを、冷静に根気よく、排除されてもやむを得ないと不承不承でも納得させるまで改善勧告する事でしょう。  その説得のプロセスで就業規則の罰則規定の文言(諭旨、譴責等)をちらつかせるのは控えた方が無難です。ある意味脅しになるからです。「悪」のレッテルを貼られ、既にそのような目で見られているという被害者意識を持たせないためです。  しかしながら、実際にはその時点で「逆恨み」は始まり、往々にして「退職」を意識した行動パターンに移行する蓋然性は高まります。  会社の知名度、給与等、当人の満足度やプライドによって異なりますが、会社に対するロイヤリティは次第に希薄になっていきます。  そして最終的には、「ならば(金を)取れるだけ取ってやろう」、「嫌がらせしてやろう」となり、①労基(取りあえず都合のいい報告)、②ユニオン(「俄かユニオン」として新規加入。金の交渉に利用)、③ネット書込(2ちゃんねる、転職会議etc.)等、となります。  そして退職後も合意書による機密保持義務にも拘らず上記③というパターンが想定されます。  会社としての最終目的は「自主退職」ですが、あくまで矯正指導、改善勧告、更生であるスタンスを一貫して下さい。  上記解説にありますが、「配置転換」というのは良策とは言いかねる場合があります。当人が望まなければ、あるいは「左遷」と認識すれば、今度は「不当な配置転換」となり、新たな火種となり得るからです。ストレートに根本的解決策を採りましょう。  

髙田俊二 行政書士
  • 髙田行政書士事務所
  • 髙田俊二行政書士

「不当解雇で訴えられないための適切な対応方法」ということですが、先ずは、相手の社員を始めから悪者に仕立て上げないことが重要と思います。そもそも、その『問題社員』を雇用したのは使用者である、という点から考える必要があります。雇用問題の根底には、依然、使用者と社員を対立構造の中でしか考えられない使用者・社員、更に専門家と呼ばれる方々が多くみられます。 言うまでもなく、現状では使用者が強い立場であり、社員を庇護する意味で労働基準法その他労働関係の各法律が制定されており、また、実際の判例も益々使用者の不当労働行為を厳しく糾弾しています。この背景を先ず意識する必要があります。 このような状況の中で、『問題社員』と始めから決めつけた対応を取られることは得策とは思えません。最近の重要判例に沿った誠意のある対応が必要です。 先ずは、日頃から社員の動向につき、雇用問題の専門家である社会保険労務士等に相談されることが有効です。万一、社員の言動に問題があれば、その段階から記録をとり、また、早期に使用者と社員の話し合いを始めることが一番です。裁判で使用者側が敗訴した例は、当初社員に対して何らの行動もせず、話がこじれてから、強引に退職を迫った例です。退職を迫る前に、その社員を雇用した使用者として、誠意をもって社員に接すれば、大半は解決する問題です。 またそれでも解決しないケースは、形のみではなく、本当に社員の立場を考えた配置転換等の処置をすることです。また、これらの対処は全て克明に記録をとっておくことが必須です。裁判においても、ポイントは使用者が誠意を持って社員に対応したかどうかです。誠意をもった対応が記録されているケースでは、ほとんど、使用者が不当解雇をした、とは判断されていません。 以上のことを尽くした上で、『本当の問題社員』であった場合には、毅然と法的な対応をされる必要があります。この場合は対立構造が予想されるはずですから、早期に弁護士に依頼する必要がありますが、この前提として、トラブルが発生する前から、就業規則の解雇規定に不備・漏れがないか、社員との間の合意書の内容、徴求方法に不備がないかをチェックしておく必要があります。

門田睦美 税理士
  • 門田睦美税理士・社労士事務所
  • 門田睦美税理士

有期社員の場合、期間満了前に解雇することは、相当の理由であったとしても難しいとおもわれます。これは、雇用契約として結ばれたものが、もともと期間があるため、その前に解消することは、損害賠償にあたるとも言えます。 有期社員については、更新時の更新しない理由書を提示して理解を頂くことが重要であり、1回でも更新した場合は、次回も更新があると期待させてしまうため、問題のある社員には、当該社員の方の固有の仕事を与えず、なるべく短期的な仕事をお願いし、会社が特にお願いできる仕事がないことを理解してもらうことが重要かと思います。能力が低いというだけの解雇は、例え就業規則で当該解雇を定めていても難しいので、数量的に理解ができる理由を示すべきかと思います。

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この記事の監修者

弁護士経験30年以上!培ったノウハウを還元し、企業・店舗だけでなく個人の法律問題にも幅広く丁寧な対応を心掛けております。 <当事務所の特徴> 1_企業・店舗へ積極的なアドバ...