資本金はいくらがいい?起業を考えたら知っておきたい資本金のこと

資金調達支援

企業の生存率という言葉をご存知でしょうか。ある調査によれば、ベンチャー企業が創業から5年後に生き残る確率は15.0%、10年後にはわずか6.3%といわれています。新規に事業を始めた会社の未来がいかに厳しいか数字を見ればわかるのではないでしょうか。この企業の生存率の低さには資本金の額も関連しているといわれています。会社設立を考えたら覚えておきたい資本金について解説します。

資本金とは

会社法第445条第一項によれば、資本金とは「設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とする。」とあります。言い換えれば、「出資者が拠出した資金が資本金」ということになり、会社の財産の基準値ともいえます。この資本金の額は会社設立時に設定し登記することになりますが、設立後の増資や減資も可能です。資本金が多ければ会社の運転資金も多いということになります。

資本金があまりに少ない場合は経営が立ち行かず、会社設立後そう時間が立たないうちに、債務超過や資金不足におちいるという危険性もあります。また、会社の規模に伴わない多額の資本金額を設定してしまうと、税金が多く課されるなど経営上不利なこともあります。さまざまなことに影響する資本金の額は、自身の会社の規模などをよく考慮したうえで設定をしましょう。

資本金の額が信頼につながる

2006年以前は「最低資本金」が定められており、最低でも株式会社1000万円、有限会社300万円が必要でしたが、2006年の会社法改正により「最低資本金制度」が廃止されました。これにより、株式会社や有限会社など会社の形態を問わず、資本金1円からの会社設立が可能となっています。しかし、資本金が1円の場合、登記上は可能であっても事業の元手となる金額としては現実的な金額とはいえないでしょう。

資本金の額は信用にも影響します。最低資本金制度が撤廃されたといっても、資本金の額が企業の信用を図る物差しとして使われているという現実があります。とりわけ、取引先が大手の場合「取引口座」の開設にも影響を及ぼします。

融資の額にも影響する

会社設立を考えたならば、起業後のキャッシュフローを入念に考えていく必要があります。とくに、初期投資としていくら必要なのか、設立後、会社経営が軌道に乗っていくまでどれくらいの経費が掛かるのか十分に検討しなければなりません。

検討の結果、自己資金だけではまかなえないと判断された場合は融資による資金調達を考える必要があります。資本金の額はこうした創業融資にも影響をおよぼします。融資制度により異なりますが、自己資金割合の比率が融資可能額を左右することが多くなっています。資本金の額を決める際には、会社設立後のキャッシュフローを十分に検討し、創業融資の必要性についても十分に考慮しなければなりません。

許認可の取得に財産要件があることも

会社設立に伴い許認可が必要な事業を行う場合、申請を行う際には財産要件が設定されている場合があります。登記簿上の資本金額が以下の金額を上回っていなければならないとは限りませんが、会社設立後すぐに許認可事業を行う場合は、資本金で財産要件を満たすほうがスムーズです(※)。以下に財産要件の一例をあげます。

・300万円以上:第3種旅行業

・500万円以上:一般建設業

・700万円以上:第2種旅行業

・2,000万円以上:特定建設業

・2,000万円×事業所数:一般労働者派遣業

このほかにも財産要件が設けられている許認可は多くあります。また、資本金以外の財産要件もある場合があります。許認可が必要な事業を新たに始めようと考えているなら、事前に所轄の官公署で確認しましょう。

(※財産要件についての補足)

・旅行業…基準資産額が上記の金額を満たす必要があります。直近の事業年度の貸借対照表に記載の資産の総額から負債の総額を差し引き、さらに繰延資産、不良債権、営業権を差し引いた金額が基準資産額になります。

・建設業…一般建設業は自己資本(貸借対照表に記載の純資産の部の合計額)が500万円以上、もしくは500万円以上の預金残高証明書など資金調達能力を証明する必要があります。特定建設業の場合は資本金の額が2,000万円以上かつ自己資本の額が4,000万円以上など、一般建設業よりも要件が加重されています。

・一般労働者派遣事業…基準資産額(資産の総額から負債の総額を差し引いた額)が、2,000万円に事業所数を乗じた額以上である必要があります。さらに、現金預金の額が1,500万円×事業所数以上であること、負債総額の7分の1以上であることも満たす必要があります。

資本金は税金にも影響する

資本金の金額は税金にも影響をおよぼします。俗に1,000万円の壁・3,000万円の壁・1億円の壁といわれ、この金額を境に税金が変わっていきます。

たとえば、消費税の場合、資本金1,000万円未満の場合は会社設立後2事業年度は消費税の課税はなされません。しかし、1,000万円以上となった場合は課税されることになります。また、資本金の額は住民税の均等割にも影響します。資本金が1,000万円を超えた場合は法人住民税の均等割が高くなります。

こうした税制に関する分岐点は、3,000万円の壁・1億円の壁でもいえることです。資本金3,000万円は「特定中小企業者等」のラインともなり「中小企業者等が機械などを取得した場合の特別控除」にも影響します。また、資本金1億円の壁は中小企業者の定義のラインでもありさらなる節税上の分岐点となります。資本金の額のわずかの違いにより大きな節税となる場合もありますので、資本金を考える際には上記の「壁」を意識するようにしましょう。

資本金の額は十分に検討して相応しい額を決めよう

会社を設立する際には資本金が必要です。資本金は会社の大きさの目安ともいわれ単純に考えると多いほうが良いようにも思えますが、この金額はさまざまなことに影響します。会社の信頼度を表わしたり融資可能額に影響したり、許認可が必要な業種の場合は最低資本金額が定められていることもあります。加えて、消費税や住民税など税金の額とも無縁ではありません。会社を設立する際にはビジョンやキャッシュフローを十分に考え、相応しい資本金の額を考えていきましょう。

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この記事の監修者

【中小企業から宗教法人、スポーツ選手まで 海外進出のサポートも充実!】 みなさんこんにちは。代表の今野真輔(こんの しんすけ)です。 税理士として開業したきっかけは、税...

プロのコメント

山栄大幸 社会保険労務士
  • 労働者派遣申請代行センター
  • 山栄大幸社会保険労務士

会社設立においては、商法上、発起設立と募集設立に分けられます。発起設立は、中小企業に多く見られ、労働者派遣事業の許可申請や建設業の許可申請を行う場合に記載する許可申請書や事業計画書の中で記載する株主持ち分割合においても、代表取締役と取締役で発行済株式を保有するのが典型的な例になります。一方で、大企業においては、グループ会社で相互に持ち合わせたり、第3者から株主を募集してから、利益配当を行ったりする募集設立が多く見られます。 当該発行済株式を一般的に資本金と言い、貸借対照表の貸方の純資産の勘定科目となります。 現在は、資本金に関しては、規制緩和されており、会社設立が以前より容易になっておりますが、旧商法の基準を見れば、株式会社の最低資本金は1,000万円で、旧有限会社法の最低資本金は300万円となっておりますので、貸借対照表=財政状態の健全性を考えれば、当該基準が標準であることが推測できます。 財政状態の健全性というのは、貸借対照表の総資産の中の自己資本の割合、即ち自己資本比率が一定の基準を上回っているという事ですので、資本金及び資本剰余金、利益剰余金の構成割合が多いに越したことはありません。 一方で銀行からの借入金や社債の構成割合が多ければ、財政状態の健全性が危ういと言う財務分析ができます。 私も労働者派遣事業の許可申請を行う場合に、通常は基準資産2,000万円で現預金1,500万円、暫定措置を採る場合は、10人の労働者派遣を行う場合は、基準資産1,000万円、現預金800万円、5人の労働者派遣を行う場合は、基準資産500万円、現預金400万円と会社の規模に応じて、総資産の中の自己資本の割合(自己資本比率)が一定の割合を満たさなければ、企業の担保能力という点において、監督官庁である労働局から業務の規制が行われます。 建設業の許可申請その他の許認可申請においても同様ですが、資本金=自己資本と借入金=他人資本の構成割合において、自己資本比率が高ければ、財務(財政状態)の健全性があるものとして、行政官庁より評価されるのです。 当該状況において、許可決定が行われるのです。

辻本弘仁 税理士

平成18年の会社法の改正により、資本金はいくらでも法人の設立ができるようになりました。個人的な考えを述べると資本金はいくらでも構わないとの考えです。ただし、私が設立時にアドバイスすることがあります。まずは、1ヶ月の経費はいくらになるのか?が明確かどうかです。これが分からないのであればまずそのことを明確にしないといけません。なぜなら、いくら売上を上げれば利益が出るのかが分からないからです。 その3ヶ月分は最低ないと資金繰りが苦しくなり、融資も受けにくいと考えます。 また、上記の許認可が必要な事業については、その金額を用意することをお勧めしています。 その後、追加で考えないといけないことは税金です。 上場を目指す場合は、別として中小企業のままである場合は、1,000万円を超えないようにアドバイスしています。 法人住民税の均等割の支払が増えるからです。 特定建設業や特定派遣を取りたい場合には、設立後何年で利益を積み上げるかのアドバイスをしています。 よって資本金は、業種と今後の目標をお聞きした上でそれに見合うような金額で設立することをお勧めしています。

田村栄二 税理士
  • 田村栄二税理士事務所
  • 田村栄二税理士

開業時の資本金の額については、税務的な面と財務的な面の2つの側面から考えて頂きたいと思います。 税務的な面では、1千万円という金額がポイントになるようです。 資本金が1千万円未満であれば、通常、法人の設立から最初の2年間は消費税が免除されますが、当初より資本金が1千万円以上であると 設立1年目から消費税が課税されます。 また、法人住民税の均等割という赤字の場合でも課税される地方税についても多くの場合、1千万円以下である場合と1千万円超である場合には、その金額が大きく異なってきます。 東京23区内であれば、1千万円以下が7万円であるのに対して、 1千万円を超えますと18万円となります。 法人の設立登記で、資本金を990万円とするケースがよくありますが、この税金の面が大きいと思われます。 財務的な面から言えば、自己資本である資本金が大きい金額である 方が有利と言えます。 仮に法人設立後、すぐに創業融資を受けるにしてもある程度の金額の資本金であった方が、対金融機関上有利に働きます。 ですので業種や事業規模にもよりますが、お金のある方であれば、 800万円以上900万円位までの資本金を準備し、お金のない方でも 最低300万円程度を準備することをお薦めします。 もちろん資本金の額だけで創業融資の額は決まるわけではないのですが、多くの場合、1期目から大幅な黒字となることは少ないため、 ある程度の自己資金を準備しませんと、2期目以降の事業の継続が困難になるケースが多く見うけられます。

荻原正樹 司法書士
  • 司法書士おぎわら相続登記事務所秋田
  • 荻原正樹司法書士

当事務所にご相談いただく会社の設立案件は、株式会社であれば資本金100万円ほどの中小企業で、発起人が全額出資する形の発起設立になります。 合同会社の設立の場合でも、一番多い価格帯は、やはり100万円前後だと思います。 とにかく資本金は低額でもいいからまずは法人としてスタートをきる。そして、業績が上がったらその段階で増資等を考える。 そういう方法も考え方の一つだと思います。

越川智幸 行政書士
  • 越川行政書士事務所(福岡)
  • 越川智幸行政書士

ご自身が経営する会社を設立する方へアドバイスします。 先ず重要なのが、資本金として出資するのがご自身のみか、家族や友人から出資を受けるのか、この点を決める必要があります。基本的には、出資する株主が会社のオーナーで、会社の活動に関する決定権があります。(厳密には、種類株式や取締役権限など、ほかの要素もあります。) 留意点としては、家族や友人であっても、複数名の意見を統一するのが難しくなるケースがあり、会社が長く存続するほど、その傾向が高まることです。 次に、資本金の金額を決める必要があります。許認可要件を満たすこと、しっかりと事業計画を作成の上で、事業が軌道に乗るまでのキャッシュフローを確保することは、前述のとおりです。創業時点で設備投資等の資金が必要であれば、当然に資本金の厚みが必要であり、自己資金の水準次第では出資を募る必要がでてきます。 留意点としては、資本金を追加する度に、登録免許税が少なくとも3万円ずつコストとなることです。手間を考慮しても、当初の資金調達設計が大事です。 資本金ではない資金調達として一般的なのが、金融機関からの借入金です。日本の政策として、中小企業の創業率を向上させることに取り組んでいることから、創業融資には優遇措置が設けられていることが多くあります。金融機関は、創業融資をする際は、創業計画書をみて、事業の継続性、キャッシュフローの持続性、融資の回収可能性を評価の上で、融資額を決定します。私のような中小企業診断士は、創業計画書の計数面と、事業内容である定性面との、両輪をサポート、創業計画書策定支援を行っています。融資の保証人機能を担う、信用保証協会へのお取次ぎもサポートしています。 留意点としては、創業融資は1回のみ、創業2年以内など、制約が設けられていることが多くあります。この点は、金融機関へお問い合わせください。 なお、会社設立の手続きにおいて、公証役場で定款を認証する必要があります。当事務所のように電子定款に対応している事務所へ委託される場合は、ご自身で申請される場合のコストである4万円の収入印紙が不要となります。 以上、会社設立をお考えの方の一助になれば幸いです。 中小企業診断士・行政書士 越川智幸

松井孝允 税理士
  • 松井孝允税理士事務所
  • 松井孝允税理士

資本金の額をいくらにするかについては、創業後に存在するデスバレーを乗り切るのに必要最低限な金額スします。創業資金を全額自己資金とするのか、融資も一部含むのかによっては金額が異なりますが、少なくとも営業開始後最初に売掛金ないしは売上金が回収可能な時までは支払いを可能とする金額となります。また、創業資金の一部を借入によって調達する場合は資本金等の自己資金の額によって借入額の上限が決まることもありますので、資本金の決定は経営計画から導かれます。私はここまでのプロセスについて事業計画の実現可能性と計数面双方の整合性を確認しながら経営計画に基づいた資金調達の支援を行っています。

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