残業代を削減できる? 変形労働時間制導入のルールを解説

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労働時間を1日単位で見るのではなく、一定の単位で計算をすることで、繁忙期の残業代を抑えることも可能です。ルールをしっかり守れば、個人事業主でも導入することは可能です。変形労働時間制のルールや導入の基準について、ご紹介したいと思います。

原則的な労働基準法のルールとは

そもそも、労働者というのは法律によって守られています。そのため、いくら雇用関係にあったとしても好きなように労働させることはできません。一般的に労働時間というのは、休憩時間を含むケースが多いです。しかし、労働基準法において労働時間というのは休憩時間を除いた実労働時間のことを言います。労働基準法に規定されている従業員の労働時間は、1日8時間、1週間で40時間であると規定されています。それ以上無理に労働者を労働に就かせると事業主は法律に基づいて罰則を受けることとなるので、法律を守って労働に就かせなければなりません。

もし、雇用契約などで、この基準を超える労働時間の取り決めを行ったとしても、労働基準法を越えた労働をさせることができず、無効となりますので注意が必要です。そのため、一時的な時期だけ多く労働してもらいたい場合は、変形労働時間制をとり入れなければなりません。変形労働時間というのは主に2つに分類されます。それぞれについて解説していきましょう。

1カ月単位の変形労働時間制とは

1カ月単位の変形労働時間制というのは、1カ月の平均労働時間を法定労働時間に収めることができる範囲で労働時間の調整をすることができる制度です。たとえば、事業において月初めや月中はそこまで忙しくないが、月末になるとかなり忙しくなって残業が多くなってしまうという会社は少なくありません。1ヶ月が31日であって、月末の5日間が繁忙期である場合、休日を除く平日18日間は毎日7時間の労働時間、そして月末5日間は労働時間を10時間と制定することで、1ヶ月の労働時間を176時間にして、1ヶ月31日177.1時間の法定時間を守ることができるようになります。

このような1カ月の変形労働時間制を取り入れることによって、残業代の過度な負担を適切にコントロールすることもできるでしょう。

1年単位の変形労働時間制とは

また、1カ月単位の労働時間ではなく、1年単位で一定のシーズンごとに繁忙期や閑散期がある場合、1年単位の変形労働時間制を導入することが可能です。閑散期のシーズンにおける労働時間を減少させて、繁忙期に当てることで繁忙期の残業時間を減らすことが可能になります。たとえば、繁忙期になると労働時間を増やしたり、1週間の労働時間を6日にすることなども可能です。ただし、年間の法定労働時間は、365日で2085.7時間、366日で2091.4時間となるので、その法定労働時間を越えないようにしましょう。

また、1年単位の変形労働時間制は、1カ月単位の変形労働時間制と違って休日についても制限があります。たとえば、閑散期をすべて休みにして、繁忙期をすべて労働に当てるなどの扱いはできないようになっています。そのため、労働時間や休日については、次のように制限がされています。

1日当たりの労働時間:10時間まで

1週間当たりの労働時間:52時間まで

原則として連続で労働できる日数:6日間

特定的に連続で労働できる日数:1週間に1日の休み

変形労働時間制導入の基準

変形労働時間制を取り入れるには、一定の要件が必要となります。

1ヶ月の変形労働時間制については、とても簡単に取り入れることが可能です。1ヶ月の所定労働時間を週平均40時間という法定労働時間内に収まるように調整をして、就業規則にその旨を記載するだけでOKです。就業規則にさえ記載しておけば、所轄の労働基準監督署に届け出をする必要がありません。

ただし、1年単位の変形労働時間制の場合は、1年間の労働日について法定労働時間内に抑えるようにしたうえで、労働者の代表と労使協定を結び、その協定を所轄の労働基準監督署に届け出をしなければなりません。これらについて、しっかり順守したうえで労働をさせないと労働基準法違反となり罰則の対象となります。

導入にあたって注意すべきこと

変形労働時間制だからと言って、自由に労働時間を変動させることはできません。たとえば、所定労働時間が7時間と就業規則に決められている日に9時間働いた場合、他の日で2時間就業時間を短くすることで調整をすることができません。あくまでも2時間分の残業代は発生することを理解しておきましょう。

そして、就業規則にしっかりと分かりやすく制定するようにしましょう。労働時間をあいまいにすることで、残業をさせているのにさせていないように振る舞う企業が存在しています。そのようなことをすれば、法律違反となるので罰則の対象となります。

また、そもそも就業規則で法定労働時間をオーバーしてしまっているケースもあります。しっかりと計算をして、法律に沿った労働時間にするようにしましょう。

適切な運用で正しく残業代の削減を

変形労働時間制は、正しく運用することで適切に残業代を削減することが可能です。変形労働時間制の内容によっては労使協定も必要となります。法律違反を犯さないためにも、専門家である社会保険労務士などに相談をしながら進めていくようにしましょう。

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この記事の監修者

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プロのコメント

吉川直樹 社会保険労務士
  • 吉川経営労務商会
  • 吉川直樹社会保険労務士

 1w40Hが守れない企業の救済策として考えられたのが変形労働時間制です。現実と法律の乖離を埋める、合法的な法的テクニックであって、決して潜脱手段ではありません。ただ複雑な法体系だな、という印象が強いため、生かし切れていない企業が多いと思われます。

原論 社会保険労務士
  • 原労務安全衛生管理コンサルタント事務所
  • 原論社会保険労務士

労働時間の原則は1日8時間、週40時間です。 (※週の労働時間については、10名未満の特定の業種に関しては44時間に猶予されております) これを法定労働時間と呼びます。 これに収まるように労働時間や休日などを設定する必要があります。 変形労働時間制は、残業の削減ということではなく、所定労働時間がこの枠を超過してしまう場合、ある一定の期間を通じて平均週40時間に収まるようにあらかじめ設定すると、特定の日や特定の週に法定労働時間を超過したとしても、法定労働時間の枠におさまっているとする制度です。 1か月以内の枠であれば、就業規則などで定めることで設定できますし、1か月を超え1年以内の期間であれば、就業規則に規定の上、監督署に協定届を提出することで、この枠が認められることになります。 シフト制を用いる事業場については、一般的に1か月単位の変形労働時間制を用いていることが多いのですが、問題点も見受けられることがあります。 本来、平均40時間以内になるようにするはずが、シフトの組み方により40時間を超過している場合があるのです。 これを超過すると時間外労働ではと思われるかもしれませんが、そういうことではなく、枠がそもそも40時間を超えてしまっているので、法定労働時間超過という扱いになり、労働基準法違反として指摘を受けることになってしまいます。 また、変形期間が始まってから、シフトの変更などすることも原則できません。 この辺りを注意して設定する必要がありますので、労働基準法違反として指摘を受ける前に、ご不明な点はご相談ください。

木村和也 社会保険労務士
  • きむら社会保険労務士事務所
  • 木村和也社会保険労務士

1ヶ月の変形労働時間制であれば特例措置対象事業場【(10名未満で小売業・理美容業・病院・診療所・(介護、老人ホーム等の)社会福祉施設・など】の場合は週平均44時間、例えば31日の月では194.8時間まで割増賃金の支払いが必要ありません。但し、これから導入される場合は労働者にとっては不利益変更になりますので導入にいたっては合理的な理由等が必要になりますので安易に導入出来るとのお考えはご注意が必要です。専門家へのご相談をおすすめします。

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