「残業」という概念がなくなる?高度プロフェッショナル制度とは?

就業規則

「残業」という考え方がなくなるといわれている高度プロフェッショナル制度。一方で残業ゼロ法案と揶揄されるこの法律の目的は、どんなところにあるのでしょうか。なぜこの制度が起案されたのか。諸外国はどうなのか。制度の進捗状況とともに、法案の課題についても考えます。

高度プロフェッショナル制度が生まれた背景

高度プロフェッショナル制度の誕生には背景があります。どのような時代背景で生まれたのでしょうか。

もともと日本は第一次産業、第二次産業が中心で、時間給労働に合致した社会的状況でした。高度経済成長を経てサービス業が中心となり、特に管理職に対して管理給、成果給の整備が求められました。事前に能力給を推進していたアメリカから要求されたこともあり、2005年以降「ホワイトカラーエグゼンプション制度」として提唱します。ところが同制度は反対勢力により「残業ゼロ法案」と呼ばれ、またチームワークで仕事をする傾向が強い日本の社会風潮に合致しないとして、頓挫します。また、既に裁量労働制やフレックスタイムという制度があることも、浸透しない根拠のひとつとされました。

2015年、安倍内閣は成長戦略の一環として、労働基準法の改正を提唱します。ホワイトカラーエグゼンプションの流れもあり、2年間法律の審議は進まないものの、今後の流れで一気に話し合いが進む可能性があります。

残業ゼロ法案と揶揄される所以

高度プロフェッショナル制度は管理職、もしくは所得の高いエグゼクティブを対象としているため(現在の適用所得の下限は1075万円)、対象外の人には関係なく、現在の労働基準法が適用されます。ただ、現在の1075万円はあくまで導入口であり、今後対象の拡大が懸念されることが「残業ゼロ法案」と呼ばれる所以です。実際にホワイトカラーエグゼンプション導入時には適用年収が900万円とされていましたし、経団連からは年収400万円という水準が期待されたこともありました。

日本はこのような労働の特例において、管理者側(雇用主側)が理性を持った使い方をせず、社会的に非難される流れが目立ちます。見なし管理職制度に代表される導入の拡大です。高度プロフェッショナル制度もこのように、なし崩し的に導入範囲が拡大するのでは、という懸念が根強く残っています。

高度プロフェッショナル制度の進捗状況

ニュースで以前取り上げられていたけれど、そういえばどうなった?という人も多いでしょう。進捗状況についてお伝えします。

2015年に提唱された高度プロフェッショナル制度は、2年間が経過しても審議は進みません。これは何故でしょうか。反対派も根強いため、審議が内閣の支持率に関わるという判断だと考えられます。また、それまでの日本の労働慣習大きく変更する法律のため、導入の軋み、ハレーションも強いと考えられるためです。ただ、今後(担当省である)厚生労働省のスタンスや内閣の方針で短期間で議論が進む可能性もあり、注目されています。IT社会の進む今後は、このような能力給制度に違和感のない働き方も増えているため、今後何かの「きっかけ」を起点として審議が一気に進捗していく可能性も高いです。

その時には、本来は残業代を支払わないことを目的とはしないこの法律を、いかに残業ゼロ法案にしないよう修正協議していくか、が主な審議のポイントとなるでしょう。

高度プロフェッショナル制度がもたらす社会

この法律が確立されると、社会にどのような変化がもたらされるのでしょうか。労働環境の格差に触れながら、その影響を解説します。

この法律が成立すると、いわゆる本当の意味で「能力給」という言葉が生まれるのではないでしょうか。現在も経営者や個人事業主には労働時間は関係ありません。1日20時間働いても、5時間しか働いていなくても、さまざまな意味で「結果」を残した人間や会社が評価されるようになっています。高度プロフェッショナルの導入は、会社員のなかにも時間給ではない、「どのような成果を残したか」という評価基準を生むことで、あたらしい日本の働き方を生み出すものになるのではないでしょうか。

経営者にとっては自分の労働環境ではなく、会社の賃金構造、労働環境が大きく変わるきっかけともいえます。会社の人件費を見ながら、導入において制度がどうなっていくのか、最新情報をしっかりと抑えるようにしましょう。

高度プロフェッショナル制度が日本社会を変える?

日本の労働を大きく変える高度プロフェッショナル制度。ホワイトカラーエグゼンプションの導入時から10年以上、いわば「停滞」の続いている法律導入ですが、産業構造の変わった現在の日本には必要な法整備です。高度プロフェッショナル制度と名前を変え、かつ審議も2年以上保留されていますが、今後の流れに注目です。経営者としては、会社の給与構造を変える制度でもあるため、最新情報をしっかりと抑えていきましょう。

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プロのコメント

秋山倫一 行政書士
  • 行政書士事務所秋山法務店
  • 秋山倫一行政書士

「高度プロフェッショナル制度」?耳障りの良い画期的な制度であるかのように聞こえますが、各々会社には個別具体的な経営環境、取引事情がある訳ですから、行政の仕掛けた罠にはまることなく自社の経営ポリシーを貫くべきと考えます。  1日の業務の総量を基に優先順位をつけ、全従業員でワークシェアリングして所定就業時間内に終了するという原始的、基本的な仕事の取組で十分ではないですか。  IT化が進行しようがIT産業が台頭しようが、会社組織で業務を遂行するとは普遍の作法があると思います。  ただ常に念頭においていただきたいのは、社内で日常的に行われている「仕事」が、実はただの「作業」でしかないという事、「作業」は価値を産まないという事。  ならば業務改善して、従業員すべてが所定就業時間内にルーティンワークを終え、次のビジネスを模索する余裕をもつ事、これに尽きると思います。  社内に1000万プレーヤーはいりません。総合力が重要です。 また、年俸や給与に残業代○○時間分含むといったようなインチキ臭い給与体系にも疑問を持ちます。  このような新しい制度に関する議論をする前に、自社に適した労働及び労働時間、給与あるいは退職金制度等につき今一度見直してみてはいかがですか。  

原論 社会保険労務士
  • 原労務安全衛生管理コンサルタント事務所
  • 原論社会保険労務士

元労働基準監督官の社労士という立場から見ると、今回の制度は労使双方にとってあまり良い制度とは言えません。   労基法上の原則以外の労働時間制度を導入する際、常にあらゆる面からのメリットデメリットを考えることが重要です。 裁量労働の拡大、高度プロフェッショナル制度、フレックス期間の拡大など今回の制度自体が、会社に利益を与えるものであると判断すれば導入することは可能ですが、目先の利益だけにとらわれてしまいがちです。 導入することで、労働基準監督署の臨検監督が実施される、問題があればブラック企業と呼ばれる、労働者にとっては労働条件の改悪と映りかねない、士気の低下など数多くのリスクをはらんだ制度でもあります。 一度失われた信頼を回復するのは容易ではありませんので、十分すぎるほど検討して下さい。 ご不明な点は当方まで。 http://www.roumuanzeneisei.jp

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この記事の監修者

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